『電機風呂』



 最近の温泉ブームで各地に多くのスーパー銭湯がオープンしている。

 僕、西条武(さいじょうたけし)は小さな頃から温泉や銭湯が大好きで、子供の頃の夢はお風呂屋さんという無類の風呂好きである。

 そんな僕も今年大学を卒業し就職する。

 就職先は去年内定をもらった滝之湯株式会社である。

 この滝之湯(株)は主にスーパー銭湯や温泉テーマパークなどを開発・管理している会社だ。

 そしてまた、最近の温泉ブームの火付け役としても有名である。

 そして今日、僕はその滝之湯の社員として1日目を迎えようとしていた。

 僕の配属されたのは最近オープンした電機湯である。

 この電機湯は最近若い温泉好きの中で密かなブームになっている電機風呂を全面に押し出したスーパー銭湯で、何でも都会のど真ん中にあるのに天然温泉を使用していて、15メートル四方の大露天風呂でオープンから数日で数多いお客を集めていた。

 僕もまだ実際は行ったことがなかったので、すごく楽しみであった。

 そして僕は電機湯に出勤し案内された常務員室で朝の点呼を受けていた。

 新入社員は僕だけらしく、社員も僕も含めて4人。

 後はバイトで補う形となっていた。

 点呼も終わり、新入社員の挨拶をすませ僕は部長室に呼ばれた。

 部長はこの辺りのスーパー銭湯を管理する仕事をしており、いつもこの電機湯にいるわけではないが、今日は僕が新入社員として入ってくると聞いて来てくれたらしい。

「西条君、君はすごくお風呂が好きらしいね」

 優しい笑顔で部長は僕に聞く。

「はい、子供の頃から三度の飯より大好きでした」

 良い印象を与えるため冗談交じりで僕が返すと部長は「君面白いね」と笑ってくれた。

 そして、少し部長と話をして最後に部長がこういってくれた。

「今日は平日だし、開店の6時まで30分しかないけど、一度入ってくると良いよ、ここの風呂がどんなに良いか解らないと、お客様にも勧められないだろう」

 僕はその言葉に大喜びで部長にお礼を言うと、新入社員はみんなこうするんだよと笑顔で部長が答えてくれた。

 とにかく、そんなに時間がないのと、まだ入っていないお風呂に一番風呂で入れる喜びに僕は急いで脱衣所へ向かった。

 脱衣所は暖かく綺麗に整えられており、もう掃除が済んでいたらしくゴミ一つ落ちていなかった。

 僕は時計を見てもう25分しか時間がないことを確認すると、慌てて服を脱ぎ風呂へと直行した。

 浴場への入り口は鳥居がデザインされた押し戸になっていた。

 綺麗に赤く塗られた鳥居に僕は少し魅入っていたが時間がないこともあるので早く浴場に向かうことにした。

 扉を開けるとそこは僕にとって天国だった。

 多くのお風呂があり露天はもちろんあの大電機風呂もあるもあった。

 僕はそそくさと体と髪を洗うと大急ぎで大電機風呂へ向かった。

 小さな頃は少し苦手だった電機風呂だかが最近は入りやすく作り替えられており、全身マッサージを受けているようで大好きだった。

 早速僕は右足から一気に湯船に使った。

 温泉独特の硫黄の香りと電機風呂の微電動が体を包み僕を極楽へと誘う。

 それからどのくらい入っていたか忘れてしまったが、気がつけばもう5分前で慌てて湯船を出た。

 風呂から出た僕はもう一度部長室に呼ばれていた。

「どうだったかい?電機湯の風呂は」

 やはり笑顔の部長の質問に僕は満面の笑みで「最高でした」と答えた。

 部長は「そうか、最高だったか〜」と大笑いしていた。

 そして部長は社員用の服と帽子をくれた。

「これで、君も私達の社員だ!」

 僕の制服姿を見て言う部長に僕は笑顔で答える。

「では、もう一度浴場に向かうか」そう言って歩き出す部長に、僕は「何でですか?」と疑問を投げかけるも部長は笑いながら「まあついてきたまえ」と答えた。

 僕は黙って部長の後をついていき脱衣所まで来ていた。

「では、その制服のままこの鳥居の扉を開けてみてくれ」

 そう突然言い出した部長に少し不信感を抱いたが僕は黙ってその通りにした。

 そしてそこを開けると・・・

 何とあるはずの浴場はただの真っ白い大きな部屋であった。

 そこには何人かのお客さんがもう来ていたが、皆裸でまるでそこにお風呂があるように動いている。

 そのショッキングな光景に驚いている僕に部長は話しかけた。

「あの鳥居のデザインの扉は脳波をコントロールする電波が流れていてね、ある一種の催眠効果を与えるのだよ。つまり、ここには最高の浴場があると思いこませているんだよ」

「じゃあ何で、僕は平気なんですかサッキは確かにあった感じがしたんですけど!」

「ああ、それは君の着ている制服さ、その制服は特注でね、催眠電波を破る効果があるんだ」

「じゃあ、温泉というのも・・・・」

「もちろんそうさ、温泉なんか初めから引いているわけないじゃないか・・・まあ初めは挑戦したんだけどね、なかなか温泉がでなくてね、それで多くの予算がかかってしまってね、そこで私が考えたのさこの方法をね」

 そう言って笑う部長に僕はただ黙ることしかできなかった。



 そして、部長は今までにない汚い微笑みを浮かべてこういった。



「まあ、初めからいってあるだろ、電機風呂ってね」






『あとがき』



 こんにちは、ひだまりです。

 この『電機風呂』は文化祭の作品(ひだまりの種)に載せるはずだったのですが、見事落選(自分で決めたんですよ)しまして。

 せっかく作って封印しておくのも可哀想なので、思い切って載せることにしました!!

 どうですかね〜?

 僕の友達の中では意見はバラバラだったんですよ〜

 とりあえず、好きな人は好きで、嫌いな人は嫌いで、意味わからんって人もいたな〜(良いのか?)

 そんな、わけのわからん話ですか、いつものようにひだまりだからって思って許してください。(ゞ( ̄∇ ̄;)ォィォィ)



 最後まで読んでいただき、有り難うございました。

 次回の作品で会いましょう〜♪


 ご意見・感想等は下のウェブ拍手かBBSでお預かりしています。
 もちろんクリックだけでも大喜びです♪