『平和』



 この世界には魔法という不思議な力が満ちあふれていた。

 人々は魔法の力を様々な事に利用していた。

 炊事・洗濯といった日常の行為から、体の治療などありとあらゆる事に魔法を使っていた。

 しかし、この万能の力は、全てがよい方向に利用されるとは限らなかった、その力の大きさゆえに、いつの日か争いを生むこととなった。

 世界では、数々の魔法戦争が行われることとなった。

 人々は死に、今まで造り上げてきたいくつもの都市も崩れさった。

 しかし、人々の争いは終わることなく続くのであった。



 ここは、町はずれにある廃墟となった病院。

 ここには、若い科学者とその助手が住んでいた。

 二人はその病院の一室で日々研究を重ねていた。

「ふ〜、だいぶ出来上がったな」

 科学者は倒れるように椅子にもたれかかった。

「はい、ここまで来ればもう出来上がったようなものです」

 助手は科学者にコーヒーを渡しながら答えた。

「ああ、もう一踏ん張りだ」

 科学者はコーヒーを一口飲み、笑顔で答える。

「これが完成すればこの世界も平和になるのですね」

 助手もつられて笑顔になる。

「ああ、この砲弾さえ完成すれば間違いなくこの世は平和になる」

 科学者は今までの研究を思い出し感動で涙が出そうになった。

「泣かないでくださいよ、僕も涙ぐんでくるじゃないですか・・・」

 助手も感極まりつつあった。

「そうだな、私たちには感動して泣いている時間もないのだ、早くこれを完成させなければ・・・」

 そう言い立ち上がると、科学者は研究に取りかかった。

「そうですね・・・」

 助手も持っていたコーヒーを飲み干すと、慌てて研究に取りかかる。



 そしてそれから一週間が過ぎた。



「ついに完成だ!」

 科学者はその場に尻餅をつく。

「やりましたね!」

 助手もその場に寝ころんだ。

「はあ、これで世界は平和になる・・・・」

「はい・・・」



 翌日。



 その日、病院の屋上には一台の大砲、そして科学者と助手が立っていた。

「よし、これより最初で最後の実験を行う」

 科学者の白衣が風になびく。

「はい、開始します」

 助手は大砲の後方に付いている操作パネルの前に立った。いくつかの設定をした後、助手は科学者に声をかけた。

「設定が完了しました、後はこのスイッチを押すだけです」

「そうか良くやってくれた」

 そう言いながら科学者は助手から小型スイッチを受け取る。

「いえ、全ては貴方の平和への願いが、僕をここまで向上させたのです」

 助手は改めて深々と頭を下げた。

「いや、君もよく頑張ってここまでついてきてくれたよ」

 科学者は助手の前に右手を差し出した。

 助手も黙って右手を差し出し固い握手を交わした。



 そして、スイッチは押された。

 大砲の砲台から射出されたミサイルが、幾重もの雲を突き破り空中で爆発する。

 中から猛毒が漏れだした。

 その猛毒はSANSOという気体で大気に順応しやすく、人の体内に入ると魔法が使えなくなるという恐ろしいモノだ。

 猛毒は見る見るうちに世界中へと広がっていく。

 その直後、世界から魔法の光が消えていった。

 そして、世界は徐々に平和へと歩み始めた。







 時は流れ、2003年。

 ある街は爆撃機の攻撃により火に包まれ、暗い夜の空は輝いていた。






『あとがき』



 ひだまりの『短編を繋げて長編にしちゃおう作戦』で作られて作品です。

 といってもひだまりの実力では二つしか繋がらなかったんですけどね〜(爆)

 とりあえず『空』と繋げることができたので、そちらもどうぞ〜♪

 この作品自体は、ひだまりがその名前のとおり平和を願って書いたものです。

 この少ない実力でどこまで伝わったか解りませんが、もし少しでも伝われば嬉しく思います。



 最後まで読んでいただき、有り難うございました。

 次回の作品で会いましょう〜♪



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