『本当の自分』
〜前回までのあらすじ〜
特殊能力を持つ者達が通う学園の高等部生徒 山野 景一(やまの けいいち)は、自身の能力『幻影』で自分に理想の自分を投影し学生生活をおくっていた。
それは以前能力を使うことの無かった時、通っていた学校でイジメにあっていた経験があっからだ。
ある日クラスメイトの城山 美保(しろやま みほ)が景一に「私は本当の山野君が好きだな」と話しかけた。
そう美保は彼女の能力『無効』の力で景一が能力を使い続けている事を知っていたのだ。
初めは動揺した景一だったが、過去にイジメにあっていた時美保が助けてくれた事などを思い出し、本当の自分と向き合うことを決めた。
そして、景一は能力を使い続けていることを辞めた。
景一は新しい生活を美保のおかげで送ることができる用に思えたが、美保は実は昔、イジメられていたのは自分のせいだと、景一に話したのだ。
それは、イジメにあっていたのは美保であり、それを止めた景一が次の日から代わりにイジメにあったと言うことだった。
全てを聞いた景一だったが、美保を責めることなく、本当の自分としてこれから踏み出すきっかけをくれた事にお礼を言った。
美保も、景一の優しさに触れ、過去を精算することができた。
そして二人は一緒に新しい一歩を踏み出したのだった。
番外編 〜熔けたチョコレート〜
暦の上では春といっても、まだまだ寒い日が続いていた。
街は、先日降った雪が積もり軽く雪化粧していた。
それがまた寒さを強調して、本当に嫌になる。
しかし、明日に迫ったバレンタインデーに向けてこの家の厨房(ただのキッチン)は燃えさかっていた。
それというのも僕、城山 正(しろやま しょう)の姉美保(みほ)が厨房(だからただのキッチン)で彼氏の山野 景一さんにあげるチョコレートを作ってるからである。
突然、厨房(だかr・・・以下略)から出てきた姉がチョコを片手に話しかけてきた。
「正ぉ〜味見お願い〜」
これで、今日は3個目だ、正直いい加減嫌になる・・・
しかし、僕には断れない理由があった。
僕は以前イジメにあっていた、それを姉さんと景一さんが助けてくれた、それからは僕も少しずつ勇気がもてるようになり、今ではもういじめられなくなった。
だから、二人には本当に感謝している。
そして、二人には本当に幸せになってほしいと思っている、だから、僕はチョコの味見を断れないのだ。
姉からチョコをもらい口の中に頬張る。
実は今週に入ってから何度も味見をしているので、そろそろ味も解らなくなってきていた。
それでも、しっかりと舌の上でチョコを転がし、感想を答える。
「もう少し、ココアパウダーかけて良いかも・・・後僕個人としては昨日のホワイトチョコの方が好きだったかな」
「ふ〜ん、ありがと参考にする」
姉はそう言ってキッチンに戻っていった・・・が、すぐにこちらに戻ってきて、こう話した。
「実はお使い頼みたいんだけど・・・」
「なに?」
「ココアパウダー切れちゃって、買ってきてほしいの」
「う、うん・・・わかったよ」
いくら、感謝している姉の頼みとはいえ、こう何でもかんでも頼まれると、少し嫌になり言葉や態度に出てしまう。
そんな僕を見た姉は、僕の顔をじっと見つめて笑顔でこう言った。
「あれは、正が頑張ったからなんだから、変に私達に感謝しなくてもいいんだよ」
「え?」
姉の突然の言葉に僕は驚いた。
「正の事だから、イジメられなくなった事を、私達のおかげだと思って、異常に私達に感謝してるんじゃないかなって思って」
姉は僕の考えている事を解っていたらしい・・・
僕は姉に自分の心境をズバリ言い当てられ、おとなしく頷く事しかできなかった。
「そんな事だろうと思った・・・まあ、正なら味見ぐらいなんだかんだ言いつつしてくれるだろうけど・・・まあ、私も調子にのって何だかんだ頼みすぎたよ。でもね、イジメの事は本当に正が勇気を出して辞めさせたんだよ、私達なんてあえて言うなら少し背中を押してあげただけ」
「姉さん・・・」
僕は姉の言葉を聞いて心が軽くなったような気がした。
そして、姉は今まで異常の満面の笑みで最後にこう言った。
「でもね、今本当に手が離せないから、ココアパウダーは買ってきてほしいな、お釣りはあげるから、頼まれてくれない?」
僕は素直に「うん」と笑顔で頷いた。
あれから家を出た僕は、お店でココアパウダーを買い帰宅の道をゆっくりと歩いていた。
そして、丁度商店街の中にある学習塾の前を通り過ぎた時、知った顔が僕の目に入った。
ショートヘヤーで小柄、トレードマークの薄いピンクの眼鏡、クラスメイトの小河 協子(オガワ キョウコ)ちゃんだ。
すごく勉強できる子で、クラスの委員長をやっている。
まあ、成績が良い→委員長という先入観で投票により決まった委員長だけど・・・
でも、やっぱり塾に行って勉強頑張ってたんだ。
一声かけていこう、そう思った僕は小河さんがいる方へ向かおうとした。
しかし、よく見れば小河さんは、男子二人と話しをしていた。
そして、僕はその男子二人の顔を見て驚いた。
以前僕をイジメていた二人組みだったのだ。
怪しく思った僕はゆっくりと三人に近づいた。
「とにかく、黙って付いてくればいいんだよ」
「嫌よ、あなた達のやっている事は、ただの弱いものいじめよ、それに学外で能力を使う事は禁止されているでしょ」
「は〜ぁ〜これだから委員長は・・・こうなったら言う事聞いてもらうしかないな」
三人からそんな様な話が聞こえてきたと思うと、一人の男子が手に能力で炎を出した。
そう、あいつらは一人が炎を作り出す能力の持ち主で、もう一人が炎を操る能力の持ち主なのだ。
これはどう考えてもヤバイ雰囲気だ、とにかく小河さんを助けなければ・・・
僕は小河さんと男子達の間に割って入ろうとした。
しかし、炎はもう小河さんに向けられており、丁度間に入った僕に命中した。
一瞬熱いと感じたが、僕は火傷一つしていない。
それもそのはず、僕の能力は『盾』どんなアルファーの攻撃も受け付けない能力の持ち主なのだ。
「大丈夫?小河さん」
「え!・・・城山君・・・」
突然の出来事に小河さんは驚いている様子だった。
「お前!城山!なんでこんな所に!」
男子達も驚いていた。
「まあ、ちょっと通り掛かったんだけど、小河さんが嫌がってるみたいだったからね」
「は?城山のくせに生意気な!」
そう言って男子また炎を操りだした。
「解ってるだろうけど、僕の能力は君たちの炎を無効化する、いくらやっても意味無いぞ!」
「はっ知った事か!」
また炎が飛んでくる・・・
くっ・・・実際ダメージはないがこのままだとまったくらちがあかない・・・
どうにかしないと・・・
「もう辞めて・・・もういいよ・・・城山君」
そう言いながら、僕の背中で小河さんは泣き始めていた。
「平気だよっ、何とかするから」
そうは言ったものの正直解決策は全くない・・・
「何ゴチャゴチャ言ってんだ!」
炎は勢いを増して飛んでくる。
「クソッ・・・」
僕が、自分の無力さを感じたその時、突然炎が消えた。
そして男子二人はその場に倒れ込んだ。
倒れ込んだ男子の奥には、景一さんが立っていた。
「景一さん!」
「よ!またこいつらか、こりない奴らだ」
そう言いながら僕の方にやってくる景一さん。
「景一さん助かりました、どうしてここに?それに、これどうやってやったんですか?」
僕は倒れた二人を見ていった。
「いや、偶然だよ丁度近くをよりかかったら、正の声聞こえたらか、後これについては、俺の能力を利用して、一瞬大きくショックを与える幻影を二人に見せたのさ!体に別状は無いと思うけど、少しの間気絶してるだろうね・・・所でそちらは?」
景一さんは僕の後ろにいた、小河さんを見ていった。
「あっすみません、紹介しますね、クラスメイトの小河協子さんです。小河さんこちら先輩の山野景一さん」
僕は二人にお互いを紹介した。
「あっありがとうございました。山野先輩!」
小河さんは深くお辞儀をした。
「いや、礼には及ばないよ」
照れくさそうに、景一さんは頭をかいた。
そして、景一さんは照れ隠しに僕に突然話題を振った。
「ところで、正こそどうして?その袋は?」
「えっ!この袋はココア・・・・あっ!ヤバイ!姉さんが待ってるんだった!」
僕は景一さんの言葉で姉に買い物を頼まれていたことを思い出した。
「あの・・・僕急いで帰らなきゃいけないので、これで必令します、その景一さん今日は本当にありがとうございました、あと小河さんも、また明日学校で〜」
と言いそうそうに挨拶をすますと僕は家に向かって走り出した。
「えっあ・・・また明日・・・」
小河さんは僕の勢いに負けて返事をした。
「おっいって・・・忙しいヤツ・・・」
景一さんがそんなようなことを言っていたが、気にすることなく僕は走った。
走ると、僕の抱いた無力さを吹き飛ばしてくれるような、冷たい冬の風が僕の頬を叩いていた。
次の日、学校に登校すると、僕は放課後小河さんに呼び出された。
ここは教室から少し離れた廊下。
「どうしたの小河さん?何か用事」
「うん・・・実はお礼を言いたくて、昨日ちゃんと言えなかったから・・・」
「そんな、別にいいのに・・・」
僕も昨日の景一さんみたいに頭をかいた。
「うんん、本当に昨日はありがとう。あいつらに協力しろってずっと言われ続けてたの・・・それでずっと嫌がってたのにしつこくて・・・この前は、能力使ってきて・・・本当に怖くて、あの時城山君がいてくれなかったら、きっとあいつらに協力してたと思う・・・だから、本当に感謝してるの、ありがとう」
そう話した小河さんは僕にゆっくりと頭を下げた。
「いや・・・気にしないで、僕もあいつらにはイジメられてて、悪いのはみんなあいつらなんだから」
「うん、あいつらは最低だと思う、でもそんなヤツを怖がって協力したヤツはもっと最低・・・もう少しで・・・私がそれになったと思うと・・・」
小河さんは涙ながらに答える。
「ああっ・・・そんな事無いから、泣かないで・・・」
僕は慌てて小河さんを慰める。
「うっ・・・うん、ごめんね・・・あっそうだ渡したい物があるの」
小河さんは涙を拭きながら鞄からゴソゴソと何かを取り出した。
「なに?渡したい物?」
「うん、今日バレンタインデーでしょ、時間無かったから勝った物だけど、私のお気に入りのお店ので、とっても美味しいんだよ」
小河さんは綺麗にラッピングされた箱を僕に手渡した。
「あっ、ありがとう」
僕はビックリしながらお礼を言った。
その時、突然僕達に向けて何かが飛んできた。
僕は小河さんを守るように立ち、それをうけた。
僕の体に当たり消えるそれは、いつもの炎だった。
またあいつらか!
「昨日は良くもやってくれたなお二人さん」
そう言いながら近づいてくるいつもの男子二人。
「またか!いい加減にしろ!」
「うるさい!」
また炎が飛んでくる、僕はわざと体にあて掻き消した。
「もういい加減にしなさい!」
突然小河さんが大きな声をだした。
「うっ」
男子もその勢いに少しおされている。
「いつもいつも、もうあんた達にはどんなことがあろうとも協力なんてしない!」
そう言って小河さんは僕の手をぎゅっと握った。
その時、なんだか僕は力がわくような気がした。
「だまれ!」
怒った男子達は一段と大きい炎をこちらに放った。
そしていつものように僕に当たる。
しかし、その炎は僕に当たった瞬間に、消えることなく男子達の方へと跳ね返っていった。
そして、その炎は男子達の頭をかすめ消える。
「いったい!どういう事だ!」
男子達は驚き叫ぶ。
その言葉に、小河さんは冷静に答えた。
「あなた達、私の能力を忘れたの?私の能力は『強化』体に触れたアルファーの能力を強化することができるわ、城山君の場合『盾』の能力が強化されて『鏡』跳ね返す能力になったのね・・・さあ、もうあなた達の攻撃はこれで怖くないわ、これ以上燃やされたくなかったら、もうこんな事は辞める事ね」
「くそっ・・・」
そう言って、男子達は帰っていく。
「ふっ〜怖かった〜」
小河さんは男子達がいなくなるのを見て胸をなで下ろした。
「いや、凄い迫力だったよ!」
僕は小河さんに笑顔で答えた。
「うんん、凄く怖かったんだよ。でもチョコが熔けちゃって・・・」
「えっ!」
小河さんの言葉に手に持っていたチョコの箱を見ると炎で燃えて熔けてチョコが出てきていた。
「あああ〜こんなに〜もったいない!」
慌てて僕は熔けて手についたチョコを口に運ぶ。
すると口の中にカカオの香りと優しい甘さがどんどんと広がっていく。
「うまい!」
思わず僕がそう答えると、その姿を見て小河さんはクスクスと笑い始めた。
「ふふっ、そんな食べなくても〜」
「いや、凄く美味しいこれ」
そう言って僕も笑い始める。
そして、僕達は一緒になって笑って、熔けたチョコレートを食べながら一緒に学校を出た。
外に出ると、いつもより温かい冬の日差しが、さらにチョコレートを解かすような感じがした。
もう春はやってきているようだ。
『あとがき』
こんにちは〜ひだまりです。
とりあえず、バレンタインデーと言うことで、必死になって書きました。
たぶん、誤字脱字の嵐です。(これは・・・と言うものありましたらWeb拍手で・・・w)
本当にすみません。マジで必死なんです・・・ってかもう限界wバイトの中で一生懸命書いたと思いご了承下さい。
話としては、本当の自分の後編に出てきた美保の弟正が主人公の話です。
いつかこいつの話を書こうと思っていたのでこう言った形で書くことができ良かったと思っています。
とりあえず、何とかまとまって良かったです。
所で、皆さんはチョコもらいました?ひだまりは一個ももらってませんよw
誰かくれ〜〜〜w
最後まで読んでいただき、有り難うございました。
次回の作品で会いましょう〜♪
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