『三匹の子豚』



 昔々あるところ三匹の兄弟子豚が仲良く不動産屋を経営していました。

 名前は子豚不動産。

 その子豚不動産は不景気の中伸び悩むライバル店を尻目に、最近売り上げをのばしていました。

 今日もまたお客さんが来たようです。



「いらっしゃいませ」

 茶色い煉瓦造りの店に三匹の声が響きます。

 オロオロと店内に入ってきたのは少し背の高い山羊の奥さんでした。

 買い物袋をさげキョロキョロと店内の周りに貼ってある物件のチラシを見ています。

「どうしました奥様?物件をお探しですか? 」

 末っ子豚が可愛い声で話しかけます。

「ええ、ちょっと・・・」

「でしたら、あちらでご相談を! 」

 可愛い末っ子豚はそっと山羊の奥さんの手を取ると、店内にある相談コーナに案内します。

 少しオドオドしながらも、山羊の奥さんがイスに座ると、すかさず店の奥から長男豚が出てきました。

「美しい奥様が一人不動産屋にとは、よほどの事情がおありで・・・よろしければ私どもがご協力を」

 長男豚が話しかけつつ山羊の奥さんと対面のイスに座ると、どこからともなく現れた次男豚が優しく微笑みつつ奥さんの前のテーブルに暖かいコーヒーを置きます。

 山羊の奥さんは少しだけ考えたように俯き、コーヒーを一口飲んでから事情を話し始めました。

「実はうちには七匹の子供がおりまして、主人に先立たれた後、子供達と主人の建てた家にずっと住んでいましたの」

「それはそれは・・・」

「二十年前に建てた家なんですけど大黒柱もしっかりしていて丈夫な木の家なんです、しかし先日私が買い物が出た時、最近噂の凶暴なオオカミが家を襲ったらしくて、もう少しで大事な子供達が食べられてしまう所だったんです」

「心中お察しします・・・」

「いくら丈夫とはいえ最近は物騒ですし、これから子供も大きくなりますからここで家を買おうかと思っていたのですが、なにぶん高くて・・・」

「そうですか・・・それでしたらいくつかオススメの物件がございますよ」

 そう長男豚が話し出すと、次男豚がファイルをテーブルに置きました。

 長男豚はファイルの中身を見せながら物件を紹介していきます。

「やっぱり、どれも高いですね〜 」

 どうも山羊の奥さんは煮え切らない様子です。

「でも奥様、この煉瓦の家の安全性はライオン警備隊のお墨付きですよ」

「でもね〜」

 やはり、煮え切らない山羊の奥さんの様子を見て長男豚は次男豚に指示を出しました。

 すると、次男豚はお店の奥から一本のビデオを持ってきました。

「では奥様、こちらのビデオをご覧下さい、他社の木造の家と私どもの家を比べたVTRです」

 テーブルの真ん中におかれたテレビデオに長男豚がビデオを入れます。

「まずは、他社の木造の家の場合です」

 VTRは木造の家を映し出しました。

「まあこれは!」

 山羊の奥さんが声を上げるのと同時に木造の家の前に現れたオオカミが映し出されました。

 そして木造の家はいとも簡単にオオカミによって吹き飛ばされたのです。

「なんて恐ろしい・・・」

「では、我が社の煉瓦の家です」

 今度は煉瓦の家とやはりオオカミが映し出されました。

 しかし、前の映像とは違いオオカミがどんな行動をとろうとも煉瓦の家はびくともしません。

「すうごいわ!何て素晴らしいのかしら! 」

 山羊の奥さんはこの映像に大喜びです。

 その後は言うまでもありません、話を有利に進めた長男豚は物件を買わせることに成功したのでした。

「では、細々とした手続きは、また後ほどということで・・・」

「はい、どうも有り難うございました」

「いえいえ、こちらこそ、またのご来店お待ちしております」

 長男豚がお辞儀をすると次男豚が黙って続き、末っ子豚がまたね〜と手を振りました。

 山羊の奥さんが帰った後、子豚たちはそろって店の奥にある社長室へと入っていきます。

「社長、町はずれの物件売ることが出来ました」

「そうか、それは素晴らしい!あの物件は三年前の心霊騒ぎで売れ残っていたからな〜」

「ようやく肩の荷が下りた来待です」

「はははっ良くやってくれたよ、それじゃあ今度のターゲットはこの赤ずきんのお婆ちゃんにしようと思うんだが」

「いいですね〜社長自らお仕事をなさるようになってから、店の売り上げも鰻登りですよ」

「はははっ〜そうかそうか、いや丁度いい運動不足解消になって、最近は調子もいいんだよ」

「そうですか、それはそれは・・・」

 そういって笑う子豚たちのいる社長室には、夕日に照らされて三匹の子豚の影とオオカミの影がくっきりと浮かび上がっていました。





 めでたし、めでたし。



 おしまい。


『あとがき』



 この小説はおわかりの通り童話三匹の子○のひだまりアレンジです♪

 最後に、めでたくね〜と突っ込んでいただければ、ひだまり的にはOKかと思っています。

 この作品はCMで三匹の子豚を見て思いついたんですけど・・・

 ひだまりは童話や元々あるお話をアレンジするのが好きらしく、こういう雰囲気の作品が多いですね〜

 作品の長さは少し長いかも知れませんが、ストーリー的にはちゃんと流れてるのでOKかな・・・何て思っています。

 ついアレンジをしちゃうのは元々二次制作小説を書いていた癖でしょうかね〜

 ではまた、次のアレンジでお会いしましょう〜

 っておい!!!




 最後まで読んでいただき、有り難うございました。

 次回の作品で会いましょう〜♪


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