『本当の自分』
前編 〜幻影と真実〜
西暦2150年
数々の危機を乗り越えてきた人間はついにこの地球で理想郷を築き上げたのだった。
争いや戦争は数を減らし、差別や宗教、人種を超えて人間達は一つになる喜びを見出しつつあったのだ。
そんな中、地球に・・・いや、人間自身に変化が始まっていた。
それは、数年前からこの地に生まれる新生児の中にα(アルファー)と呼ばれる第二次世代人類が生まれ始めたのだ。
α達は通常では考えられない特殊能力(第六感)を持っているのだった。
人間達は喜ぶ者、軽蔑する者、様々だがαは少しずつだがその数を増やしていた。
僕、山野 景一(やまの けいいち)は小学生の頃、イジメにあっていた。
そのため、学校も休みがちになっていた。
そんな時、国から手紙が届いて僕がアルファーだと言うことが解ったのだ。
僕の能力は『幻影』。
あたりに何でも映し出すことができた。
それから数年たち、僕もアルファーの集まる学園へ入学した。
小学生の時のようなことは二度と起こしたくない僕は、常に能力を使い、自分の周りに理想の自分写しだし生活していた。
つまり簡単に言うと、イケメンで格好いい幻影を僕に常に投影して演じつつけているのだ。
だから、周りからとても評判がいい、女の子からはチヤホヤされるし、男友達も何人もできた。
もちろん、理想の自分は格好いいだけではない、スポーツもできて勉強もできなければならないのだ。
そのために、部活にも入り人の倍練習したし、勉強も毎日欠かさずやってきた。
そんなある日の事だった。
クラスの日直になり、放課後の掃除している時の事。
僕と担当に選ばれたもう一人の日直、城山美保(しろやま みほ)が突然話しかけてきた。
「山野君って『幻影』の能力者だったよね」
彼女は僕の集めたゴミを集めながら話し出した。
「あっ・・・ああ」
僕は突然の質問にビックリしていた。
何しろ、彼女はクラスでもあまり目立たない存在で、あまり喋ることもなく、日直になった今日も必要最低限しか会話しなかったのだ。
そんな彼女が、自分から突然話しかけてきたのだから、誰でも驚くのが当然だ。
しかし、彼女はそんな僕を尻目にドンドンと話しを進めていく。
「山野君っていつもそうやって、能力使い続けているの?」
「えっ・・・まあ」
「ふ〜ん、私は本当の山野君が好きだな・・・」
そう言って集めたゴミをゴミ箱に捨てると、クラス日誌を持ってから。
「日誌は私が先生に渡しておくね、それじゃあ、さようなら」
と、早々に会話を終了し彼女は教室を出ていった。
突然だったので、その時はただ呆然としていたが、すぐに正気に戻って僕は焦り始めていた。
あの時、彼女の質問があまりに自然だったので普通に答えたが・・・
僕がこの学園に入学してからずっと自分に幻影を投影し続けているから、この事実はごく一部の先生と僕しか知らないはずだ。
それなのに彼女はさっき僕に「いつもそうやって、能力使い続けているの?」と質問した。
つまり、彼女はこの事実を知っていると言うことだ・・・
なぜ彼女が知っている・・・
先生から聞いた?
いや、先生の中でもごく一部しか知らないことだぞ・・・
それに、本当の僕が好きってどういう意味だ・・・
僕はその事で頭がいっぱいになり、学校に入って初めて部活を休み、寮に帰った。
そして、自分の部屋でずっと彼女の事を考えている時、ある小学生の時の事を思い出した。
その日はいつものように僕がいじめられていた。
「ははっ、やっぱり弱え〜な〜山野は〜」
「やめてよ〜」
「はは〜バカ〜」
こんな感じでいじめっ子に囲まれていた時の事。
一人の女の子が弱々しい声で「イジメはやめなよ〜」といじめっ子を止めていた。
「は?城山?何いってんだ?まさかこいつの事好きなのか?」
そんな感じでいじめっ子に女の子もちゃかされ、次の日黒板に僕の名前と女の子の名前がデカデカと相合い傘で書かれ、それを泣きながら消していた少女がいた事を・・・
そして、黒板に書かれた名前は確かに『城山美保』だった事を・・・
僕は、念のため小学校の卒業アルバムを見てみたが、やはりそこには幼い頃の彼女が乗っていて、『城山美保』と名前も書いてあったのだ。
しかし、僕が常に能力を使っているかを知っている証明にはならないはずだ、僕たちは違う中学に進学したし、もし名前が同じでも別人だったら、あまりそう言うことには気がつかないはずだ・・・
気がついたとしても、質問の仕方が違う。
だとすると、一帯どうして僕が能力を使い幻影を移していることを知っているんだ?
そう言えば彼女はどんな能力なんだ?
俺は入学当初もらったクラスのメンバーが乗っている本を本棚から取りだした。
そこには、それぞれのステータスが簡単に書いてある。
そして、城山美保のページを見つけた。
そこにはこう書かれていた。
彼女の能力は『無効』。
彼女の前ではどんな能力も無効化されてしまうと・・・
つまり、彼女には僕の幻影は効いていなかったのだ。
彼女には格好悪いイジメられっ子の僕が見えていたのだ・・・
しかし、こうも言っていた「私は本当の山野君が好きだな」と・・・
いったいどういう意味なのか?
その時は、全く解らなかった・・・
しかし、僕はその日、久しぶりに本当の自分の姿を鏡に映した。
久しぶりに見た自分はすごく新鮮で、少し格好良く見えた。
そして、次の日僕は初めて能力を使わず登校した。
その日はなぜか肩が軽く、朝の日差しが僕を応援しているようだった。
『あとがき』
こんにちは〜ひだまりです。
最近、僕の中で地味に流行している恋愛物です(メチャ薄いけど・・・)
ってかたぶん、最近読んでる漫画サラダデイズの影響だけど・・・
どうですかね?
一応、ウェザーズハートと同じ世界と言うことで書いたのですが・・・
まあ、何て言うか・・・いつも通り展開が早いと思います。
その点で少し読みづらい所があるかと思いますが、そこもひだまりノベルとして味わってくれれば幸いです(って良いのか!?)
とりあえず、この作品がもしかしたら(かなりもしかしたら)ですが続くかも知れない事を匂わせつつあとがきを終わりにしましょう。
『あとがき』追加(2005年10月24日)
以前上のようなあとがきを書いたのですが、何と、この話の続編が追加されました!!!
パンパカパーン♪パフ〜♪パフ〜♪
いや〜、これぞ奇跡、奇跡以外の何ものでもないですね!!
とりあえず、続編追加にあたり、この名前のタイトルにサブタイトル(前編 〜幻影と真実〜)が追加されました。
もう、一度に続きを読んでしまうと言う方はこちら(後編 〜踏み出した一歩〜)をクリックです!!
それでは、次の作品で〜!!!
最後まで読んでいただき、有り難うございました。
次回の作品で会いましょう〜♪
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